2チャンネル メッセージメモリー キーヤー・キット TGkeyer (Model Num. TG-23070013)
- 長短点メモリー
- スクイーズ (アイアンビック A / Bモード)
- パドル極性切換スイッチ付き
- バグキーモード (エレバグ)
- 連続送信機能
- スピード調整範囲 16 WPM ~ 30 WPM
- メッセージメモリーチャンネル数 2
- 記録可能文字数 各チャンネルそれぞれ 127 文字
- 電源OFFでもメモリー内容保持
- 和文を含む全てのモールスコードが記録可能
- 書込み中の符号訂正機能
- モニター音 有り/無し切替可
- 単4乾電池2本で動作 (消費電流 約2mA)
- 動作電圧範囲 2.0V ~ 3.5V
- 本キット2台で4チャンネルメモリーキーヤーとして使用可能
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キットの概要
2チャンネルのメッセージメモリー(符号訂正機能付き)を搭載したCWキーヤー(エレキー)のキットです。
バグキーモード(エレバグ)も搭載しています。
バグキーモードでは、長点と短点の間には自動的にスペースが挿入されますので、メカ式のバグキーに有りがちな粘りの強い符号では無く、比較的聞きやすい整えられた符号が生成されます。
(バグキーモードではメッセージメモリーの書込み・再生は出来ません)
また、バグキーモードで CH2 スイッチを押すと連続送信になりますので、SWR の測定などに便利です。
(CH1, DOT, DASH のいずれかを押すと送信が停止します)
本キットは、全てのスイッチやボリュームを1枚の基板上に載せていますので、特にケースに入れなくても使用可能です。
TGkeyer は、基板単体で使用出来ます。
(キットにパドル、リード線は付属しません)
また、ケースに入れて使用する場合は、既製品のケースではタカチのアルミケース YM-150 にピッタリ納まります。
金属製のケースに入れて頂くことで送信出力の回り込みによる誤動作や静電気による破壊などが起こりにくくなります。
(特に車載の場合は、静電気が起きやすいので金属ケースに入れて使用することをお勧めします)
タカチのアルミケース YM-150 に組み込んだ例 (キットにリード線、ケースおよびケース取付用のスイッチは付属しません)
本キットには、ストレートキー(電鍵)用の入力ジャックも備えており、オートキーヤー、ストレートキーどちらでも使用出来ます。
(ストレートキーでは、メッセージメモリーへの書込みは出来ません)
また、パドルの極性 (DOTとDASHの左右) を切替えるスイッチも搭載していますので、エレキーは左手打ち、バグキーは右手打ちという人にも簡単に対応出来ます。
メッセージメモリーの各チャンネルには、それぞれ127文字まで記録可能なので、CQ に POTA や RS(道の駅番号)などを入れたり、あるいは和文での応答文など、長めのメッセージになってしまっても文字数を気にせず書込めます。
(符号間にロングスペース(長めのスペース)を挿入するとロングスペースも1文字分としてカウントされます)
記録できるモールス符号は、和文を含む無線局運用規則第12条別表1号のモールス符号です。
(別表1号のモールス符号以外は符号化けする場合があります。ただし、略符号や訂正符号は記録可能です。)
メッセージメモリーは、不揮発性メモリーに記録されますので、電源OFFでもメッセージは消えません。
メッセージの書込み中に符号を打ち損なった場合、これを訂正する機能も備えており、間違った符号のところまで1文字づつ遡って訂正が出来ます。
メッセージを最初から全て書き直す必要がないので、移動運用などの実戦では非常に便利な機能です。
本キットの使い方の応用としては、例えば大容量のメッセージメモリーを活かして、モールス符号の受信練習用としてもお使い頂けます。
また、ストレートキー用の入力ジャックを使用して本キットを2台接続することにより、合計で4チャンネルのメッセージメモリー・キーヤーとしても使うことが出来ます。
例えば1チャンネル、2チャンネルは短めの CQ や応答メッセージを、3チャンネル、4チャンネルには長めの CQ や応答メッセージを記録しておくなど、現場の状況に応じた使い方が考えられます。
符号のスピード調整範囲は、16WPM~30WPMです。ボリュームのセンターが20WPMとなるように設計してあります。ボリュームの端で急にスピードが変化することがありませんので、運用中のスピードコントロールもスムースに行えます。
また、メッセージメモリーの書込み・再生時もスピード調整が可能です。(ユックリ書込んだメッセージを早く再生する、またその逆もできます)
スクイーズの動作は、アイアンビック A / B モードの切換が出来ます。(デフォルトはアイアンビック B モード)
また、圧電サウンダから 1kHz のモニター音が出ますが、設定によりモニター音有り・無しが選べます。(デフォルトはモニター音有り)
本キットは、単4乾電池2本で動作し消費電流は約2mAなので、仮に電源を切り忘れても1か月以上の使用が可能です。
以上、設定方法、使用方法など詳細は製作マニュアルをご覧ください。
仕様:
| 規格値 | 備考 |
マイコン | PIC12F1822 | |
マイコン システムクロック | 8 MHz | Instruction cycle 2 MHz |
長短点メモリー | 有り | |
スクイーズ機能 | 有り | アイアンビック A / B モード切換可 |
バグキーモード(エレバグ) | 有り | バグキーモードではメッセージメモリーの書込み・再生は出来ません。 |
連続送信機能 | 有り | バグキーモード中に有効 |
スピード調整範囲 | 16 WPM ~ 30 WPM | ボリュームセンターで 20 WPM |
メッセージメモリー チャンネル数 | 2 | 不揮発性メモリーに記録。電源OFFでもメモリー内容保持 |
記録可能文字数 | 各チャンネルそれぞれ127文字まで | ロングスペースも1文字としてカウント |
記録可能な符号 | 無線局運用規則第12条別表1号の モールス符号(和文を含む) | 別表1号のモールス符号以外は、正しく記録されません。 (略符号、訂正符号 は可) |
書込み中の符号訂正機能 | 有り | |
モニター音周波数 | 1kHz (圧電サウンダ) | モニター音有り/無し切換可 |
ストレートキー(電鍵) 入力端子 | 有り | |
メッセージメモリー チャンネル増設機能 | 有り | TGkeyer増設で合計4チャンネル化が可能 |
動作電圧範囲 | 2.0V ~ 3.5V | 標準 3V (単4乾電池2本) |
消費電流 | 約 2mA | スクイーズ時 |
技術解説
使用マイコン
マイコンには、 PIC12F1822 を使用しています。
8ピンの小型パッケージで、プログラムメモリーは2キロワードです。
PIC12F1822
キーヤーの場合、高速に動作させる必要は無いのでマイコンのシステムクロックは、 8 MHz としています。クロックがそれほど高くないので低消費電流で動作します。
プログラムでは、パドルの状態 (dot / dash / squeeze / open)をタイマー割込みで 2m秒毎に見に行っており、パドル入力があれば、その状態に応じたキー出力処理を行います。
バグキーモードについて
バグキーモードでは、長点の終わり、短点の終わりにそれぞれ1短点分のスペースが自動的に挿入されます。
この機能により、メカ式のバグキーに有りがちな粘りの強い符号では無く、比較的整えられた聞きやすい符号が生成されます。
また、長点・短点ともプログラムによるチャタリングの回避機能を有しており、特に短点側はエレキーと同様、チャタリングが全く出ない仕様となっています。
ただ、長点側のチャタリング回避機能は、必要最低限度に抑えています。
これは、チャタリング回避機能を効かせ過ぎるとオペレーターの指の動きとは少し違う、言わば作られた符号になってしまうためです。
TGeS LAB では、バグキーモードは、あくまでメカ式バグキーの置き換えであり、オリジナルのキーの打感を出来るだけ再現すべきと考えています。
(長短点自動スペース挿入機能は、キーの打感より、符号の聞きやすさを優先させるために採用しています。)
アイアンビック A / B モードについて
パドルをスクイーズ (DOT と DASH のパドル両方を閉じる)すると短点と長点が交互に出ます。
DOT と DASH のパドルを同時に解放したとき、短点(長点)が出終わるとそのまま停止するのが、アイアンビック A モードです。
一方、DOT と DASH のパドルを同時に解放したときに符号が一つ多めに出力されてから停止するのが、アイアンビック B モードです。
(短点出力中にパドルを解放すると次の長点が出てから停止、長点出力中にパドルを解放すると次の短点が出てから停止)
高機能のキーヤーでは、どのタイミングでパドルを解放したら次の短点(長点)を出力するかを調整できるものもありますが、本キットにはこのような調整機能は無く、B モードでは、必ず次の短点(長点)を出力します。
本キットでは、電源を入れたときデフォルトでアイアンビック B モードで動作するようになっています。
(動作モードの設定方法は、製作マニュアルをご覧ください)
なお、メーカー製のリグに内蔵されているキーヤーは、アイアンビック B モードで動作するものが多いようです。
スピードの単位 WPM (Word Per Minute) とは
1分間に送出する語数を表します。20 WPM は1分間に20語という速さになります。
PARIS という5文字を標準の1語とします。PARIS は語間スペース7短点分を含めると、全部で50短点分の長さになります。
従って 20 WPM は、1分間に 20 x 50 = 1000 短点分 となるので、20 WPM のときの1短点の長さは、60秒の 1/1000 の長さ、つまり 60 mS ということになります。
オシロスコープなどで短点の長さを計測すれば、WPM に換算することができます。
本キットでは、スピードの調整範囲を実用的な 16 ~ 30 WPM にしてあります。あまり広範囲にスピードを可変させるとスピード調整がクリチカルになり、実際の運用では使い難いものになりますので、あえて調整範囲を狭くしてあります。
なお、スピード調整ボリュームがセンターの位置で 20 WPM となるように設計してありますので、スピード調整の目安として下さい。
メッセージメモリーの記録フォーマットと訂正機能について
メッセージを PIC マイコン内蔵の E2PROM に記録します。
E2PROM は電源を OFF してもメモリー内容を保持する不揮発性のメモリーで、モールス符号1文字を1バイト(8ビット)で記録します。
1文字1バイトなので、本キットのように8ピン PIC マイコンに内蔵されている 256バイトの E2PROM でも比較的長いメッセージの記録が可能です。
メモリーには、短点を 0, 長点を 1 として記録しています。例えば、C の場合、—・—・ なので 1010 とすることにより、1バイトで1文字分のデータを記録しています。
和文の場合は長い符号が多いのですが、例えば区切点 ・—・—・— は、010101 と記録します。
書込み中に2秒以上、間を置くとロングスペース用のコードが1バイトで記録されます。
モールス符号で定められている標準フォーマットでは、ロングスペース(語間スペース)は7短点分とされていますが、本キットではスペース感を強調するために10短点分のスペースとして再生されます。
これにより、例えば交信の最後のあいさつ TU ・・は、・と・の間にロングスペースを挿入することにより TU ・ ・ という感じで再生されるようになります。
なお、プログラムの都合上、無線局運用規則第12条別表1号に記載されているモールス符号以外のものは、正しく記録されない場合があります。
(AR, AS, BT, 和文の ホレ、ラタ などの略符号や 訂正符号 HH などは記録可能です)
また、書込み中に間違った場合などは、何文字分か、さかのぼって訂正が行うことが可能になっており、これは1文字1バイトでメモリーを管理している TGkeyer ならではのユニークな機能です。(操作方法は製作マニュアルをご覧ください)