TG-40 ゲートドライブ回路

送信部ファイナルの FET ゲートを駆動するゲートドライブには、ロジック IC 74HCU04 を使用しています。
74HCU04 は、ロジック IC ですが、アナログアンプ的にも使用しており、DDS ユニットからの正弦波をロジックレベルの矩形波へ変換しています。

                    正弦波 → 矩形波変換部
gate-drive
74HCU04 は C-MOS インバータが 6 個内蔵されており、通常はハイ、ローの 2 値を出力するロジックIC ですが、 これに負帰還をかけることによってハイゲインのアナログアンプとして使用しています。

logic-gate-74hcu04通常はハイ、ローの2値を出力する


negative-feedback負帰還をかけるとアナログアンプになる


アナログ増幅された信号は、この後、74HCU04 の #3 ピンに入力されて #4 ピンからは矩形波の形で出力されます。

ただし、74HCU04 をアナログアンプとして使用する場合、周波数高域で入力インピーダンスが低下するという問題があります。

    周波数高域での入力インピーダンスの低下について
74HCU04 は C-MOSロジックなので入力インピーダンスは非常に高いと思われがちですが、実際にはそれほどでもなく、周波数の上昇と共に低下し、しかもかなりキャパシティブになります。
その理由は、C-MOSロジックの入力容量に起因します。 74HCU04 のデータシートには typ 9pF (東芝製)、typ 3.5pF (Nexperia製) などと比較的小さな値が記載されていますが、 これは入力がロジックレベルのハイかローに固定したときの静的な値です。

下図 に Nexperia 製のデータシートから転載した入力レベル対ゲート入力容量 Ci のグラフを示します。

graph

ゲートの入力レベルにより Ci が変化し、入力レベルが丁度 電源電圧Vcc の1/2の時 (つまりC-MOSゲートのしきい値)、 Ciが最大となります。
この値は結構大きくてVcc 5V の時は、Ci = 35pF にもなります。 35pF とは、10MHz で 455Ω のリアクタンスであり、さらに周波数の上昇とともに段々ゼロに近づきます。
そこで TG-40 ではその対策として周波数高域でも最低 1kΩ のインピーダンスが確保できるように 74HCU04 の負帰還 アンプ入力に 1kΩ の抵抗(R28) をシリーズに挿入してあります。

gate-drive


下図に実際に測定してみた 74HCU04 (東芝製) を負帰還アンプとして使用した時の周波数対入力インピーダンス特性を示します。

graph

100kHz 程度までは、入力インピーダンスは 約 160kΩ 程度を維持していますが、それ以上の周波数では急激に インピーダンスが低下します。
しかし、R28 があるため、10MHz 以上でも 1kΩ は確保されています。
100kHz を超えると急激に低下する理由は、周波数が高くなると単位時間当たりのしきい値付近を横切る時間の割合が 大きくなるためと推定されます。



   キーイング回路
ファイナル FET のゲートのキーイングは、NAND ゲート TC7SH00FU で行っています。

keying


NAND ゲートの真理値表を示します。
nand-gate
ABQ
001
101
011
110

B 入力が 0 (Low ) のとき、A 入力の値にかかわらず、出力 Q は、1 (High) に固定されます。
B 入力が 1 (High) のとき、A 入力を反転した値が Q に出力されます。
これは、見かたを変えると A → Q 間はインバータとなっており、B によってインバータの出力を ON/OFF していることになります。
TG-40 では、これを利用してファイナル FET のゲートをキーイングしています。
キーイング信号は、マイコン PIC16F18346 #11ピン TX です。電鍵を押すと TX が High、電鍵を放すと TX は Low となります。


   ゲートドライブ
ファイナル FET のゲートは、入力容量があるので高周波でドライブするためには、パワーが必要です。
TG-40 では、74HCU04 の残りのゲート4つをパラに接続してドライブ能力を高めてからファイナル FET (Q08, Q09) のゲートを駆動しています。

gate-drive

なお、L000 (チップインダクタ) は、Q08, Q09 のゲートの高周波の振動を抑え、300MHz 付近のスプリアスを低減させています。